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ネット上のソースコードのコピペは著作権的に大丈夫なのか?

2022年7月4日

プログラミングで困ったときに役立つのが、ネットで公開されているソースコードです。

スタック・オーバーフローを始めとして、QiitaやZennなどのITエンジニア向け情報共有サービスの普及に伴い、他人の書いたソースコードを見る機会も増えました。

これらのネット上のソースコードは、問題解決のための手助けになりますが、安易コピー&ペースト(コピペ)することはオススメしません。

場合によっては著作権を侵害することになり得ますし、侵害せずとも社会的信用を損なうことにもつながりかねません。

では、ネット上のソースコードをコピペする際、丸パクリがダメなのは言わずもがなですが、どこまでのコピペが許されるのかは気になるところです。

この記事では、安易なネット上のソースコードのコピペがなぜダメなのか? コピペする際はどんなことに気をつけるべきかご紹介します。

この記事でわかること

  • ネット上のソースコードのコピペがダメな理由
  • 著作権で保護されるソースコード、されないソースコードの違い
  • QiitaやZenn、スタック・オーバーフローのソースコードはコピペする際の条件
  • ソースコードをコピペする際にやるべきこと

ソースコードのコピー&ペーストは著作権侵害になりうる

著作権法第10条で、著作物の種類の1つとして、ソースコードに該当する「プログラムの著作物」が明記されています。

したがって、ソースコードのコピー&ペーストは著作権侵害になり得ます。

「ソースコードがすべて著作物ならプログラミングなんてできないじゃないか! 」という意見はごもっともで、著作権で保護されるソースコードは、創作性が認められるものに限られています。

では、実際にはどこまでが著作権で保護されるのか気になるところ。

そこで参考になるのが、東京地方裁判所の平成15年1月31日の判決事例です。

この裁判はプログラムが複製、翻案されたかどうかが争点となっており、裁判所の判断は以下のとおりです。

仮に,プログラムの具体的記述が,誰が作成してもほぼ同一になるもの,簡単な内容をごく短い表記法によって記述したもの又は極くありふれたものである場合においても,これを著作権法上の保護の対象になるとすると,電子計算機の広範な利用等を妨げ,社会生活や経済活動に多大の支障を来す結果となる。また,著作権法は,プログラムの具体的表現を保護するものであって,機能やアイデアを保護するものではないところ,特定の機能を果たすプログラムの具体的記述が,極くありふれたものである場合に,これを保護の対象になるとすると,結果的には,機能やアイデアそのものを保護,独占させることになる。したがって,電子計算機に対する指令の組合せであるプログラムの具体的表記が,このような記述からなる場合は,作成者の個性が発揮されていないものとして,創作性がないというべきである。

一般社団法人発明推進協会「コンピュータプログラムの複製権,翻案権侵害の判断の基準を示した事例」

つまり、誰が書いても同じような、短く簡単なコードであれば創作性がないため、著作物に該当しないということです。

逆に言うと、難しくて長いプログラムや、独自性のある創作性のあるプログラムなどは著作権で保護されるため、ソースコードのコピペによって著作権を侵害してしまう可能性があることになります。

QiitaやZennなどのソースコードはコピー&ペーストしていいのか?

ソースコードのコピペが著作権侵害になりうると言っても、創作性の認められるソースコードに限定されます。

では、創作性の認められそうなソースコードをコピペする際はどうすればいいのか?というのは、サイトによって異なります。

例えば、クレジットを表示が条件だったり、とくに利用条件を設けていないサイトもあったりするため、サイトの利用規約や、ライセンスから利用条件をよく確認する必要があります。

例えば、Qiitaの利用規約には以下の通り記載されており、Qiitaに投稿された記事のソースコードやスニペットについては、コピペしても問題ないことが読み取れます。

登録ユーザーは、本サイトに投稿したコード、スニペットなどプログラムに類するものに限り、他の登録ユーザーが商用私用問わず無償で使用することを許諾し、他の登録ユーザーはこれを使用できるものとします。 前各項の登録ユーザーによる利用許諾には、地域制限、著作権表示義務その他付随条件はないものとします。

Qiita 「利用規約」第6条より抜粋

次に、Zennはどうでしょうか? 利用規約の著作権に関する第6条を見てみると、Qiitaとは異なり、投稿されたソースコードは、投稿者に無断でコピペして転載や配布はできないことが読み取れます。

利用者が本サービスを利用して投稿または編集した文章、画像等のコンテンツ(以下「利用者コンテンツ」といいます。)につき生じる著作権については、当該利用者あるいはその権利者に留保されるものとします。 利用者または第三者は、利用者コンテンツについて、権利者の許可を得ることなく、無断で転載または二次配布等を行うことはできません。

Zenn 「利用規約」第6条より抜粋

最後にスタック・オーバーフローはどうかというt,利用規約6条には、以下の記述があります。

The CC BY-SA 4.0 license terms are explained in further detail by Creative Commons, and the license terms applicable to content are explained in further detail here. You should be aware that all Public Content you contribute is available for public copy and redistribution, and all such Public Content must have appropriate attribution.

Stack OverFlow 「Public Network Terms of Service」

要約すると、CC BY-SA 4.0ライセンス条件の、適切なクレジット表示や変更の明記をすることでコピペできるということです。

もっと詳しく

CC BY-SA 4.0は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの1種で、下記の条件が定められています。

  • 適切なクレジット表示
  • ライセンスリンクの提供
  • 変更の旨の明記
  • 改変、加工した場合は同じライセンス下で頒布する

具体的なクレジット表示の方法などは、CreativeCommonsJapanのFAQが参考になります。

このように、創作性のあるソースコードをコピペする際の条件はサイトによって異なることが確認できます。

その他、GitHubなど、ライセンス下で公開されているソースコードについては、ライセンス条件に従って利用する必要があります。

オープンソース・ソフトウェア(OSS)のライセンスの利用については以下のページを参照してください。


まとめ

ここまで紹介したように、よく利用条件などを確認せずにソースをコピペしてしまうと、著作権を侵害する可能性があります。

著作権で保護される” 創作性 ”のあるソースコードのコピペの際は、利用条件を守れば良いとはいえ、誤って条件に違反してしまった場合は、トラブルに発展する可能性もあります。

加えて、創作性のあるソースコードかどうかは、法律の素人では判断が難しいという問題もあるため、安易なソースコードのコピペはオススメしません。

それでも、ネット上のソースコードをコピペしたいときは

  • 利用条件やライセンスをよく確認する
  • 利用条件が記載されていなければサイトに問い合わせる
  • 創作性のなさそうなソースコードであっても、利用条件に従う
  • どうしても不安な場合は弁護士に問い合わせる

などを徹底して、トラブルを未然に防ぐことをオススメします。


また、今回ご紹介したソースコードの著作権以外にも、画像やライブラリなどの著作権、UIに関する意匠権など、ITエンジニアと法律は切っても切れない関係にあります。

法律を知らずにソフトウェアを公開した結果、賠償金の支払いや公開差し止めなどのトラブルが起こってからでは遅いのです。

開発や設計の段階から、法律を意識することで、確実にトラブルを避けやすくなります。

しかし

どんな法律知識を学べばよいかわからない

著作権以外でも法律に違反しない心配になってきた

という方にオススメなのが、ITエンジニアに関わりのある法律知識を体系的に学べる本です。

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今回紹介した、ネット上のソースコードのコピペ以外にも、以前の職場のソースコードの流用や、他のアプリケーションのUIをマネてもいいのか?など、ITエンジニアなら気になるトピックが盛りだくさんです。

著作権以外にも、ITエンジニアの開発契約や労働契約、契約書まで網羅しており、この本だけで法律に関わる知識を一通り学べるようになっています。

実用書として値段は少し高めではあるものの、弁護士に相談するよりははるかにお得なので、ぜひ一度読んでみることをオススメします。

参考