リモートワークが普及した昨今、在宅用に新しい机や椅子を買ったり、専用スペースを設けたりする人は多いと思いますが、空気環境にも気を配っていますか?
もしあなたが、在宅だと集中できないと感じているなら、その原因は室内の二酸化炭素(CO2)濃度かもしれません。 実は、十分に換気されていない部屋での仕事は、生産性を低下させることが明らかになっています。
この記事では、見過ごされがちな室内のCO2濃度が及ぼす、認知能力への悪影響とその対策についてご紹介します。
目次
空気を制するものはリモートワークを制す
ハーバード大学のJoseph G. Allen氏の研究[1]https://ehp.niehs.nih.gov/doi/10.1289/ehp.1510037によって、知的労働者の生産性とCO2濃度の関係性が明らかになりました。
アメリカのプログラマーやデザイナーなどの男女24名の知的労働者を対象に、CO2濃度が管理されたオフィスで通常の業務活動を行ってもらったあとに認知テストを受けてもらいました。
CO2濃度は以下の3段階に設定され、それぞれの環境で認知スコアを計測しました。
- 550ppm:外気と同じくらいに十分換気された環境
- 945ppm:一般的な室内環境
- 1400ppm:換気が不十分な環境
ppmは「parts per million」の略で、100万分1を表す単位
1000ppmで空気全体の0.1%を表します
その結果、一般的な室内環境に比べて、十分換気をした環境では、認知スコアが平均101%向上しました。
分野毎のスコアを見てみると、換気が不十分な環境では戦略的思考(Strategy)や情報活用(Information Usage)、集中的活動(Focused Activity Level)などの低下が顕著です。
また、一般的な室内環境においても、情報活用や意思決定(Applied Activity Level)などに悪影響を及ぼすことがわかりました。
この結果から、生産性の低下を防ぐには、室内のCO2濃度をなるべく低く保つことが必要だといえます。
換気をしないとどれくらいCO2が増えるのか?
窓を締め切った室内で1日をすごすとどれくらいCO2が増えるのか測定してみました。
空気品質モニターAwairでCO2濃度を測定しながら、朝9時から夜7時まで、8畳の自室にこもって在宅勤務をしてみました。
部屋の出入りや、昼食を外食ですませたため、一時的にCO2濃度は低下していますが、外気に近いCO2濃度(600ppm程度) だったのが、夜になる頃には1300ppmを超えてしまいました。
換気をしないとCO2が右肩上がりに増えていくばかりで、換気をしないと、ものの数時間で高い濃度になってしまうことがわかります。
CO2濃度を低く保つためにできる4つの対策
生産性を低下を防ぐには、しっかり換気をして、CO2濃度を低く保つことが欠かせません。
そこで、CO2濃度を適切に管理するための4つの対策をご紹介します。
① 窓を開ける
最も手軽な換気方法で、窓での換気は、一般的に1時間に5〜10分程度が推奨されています。
窓を開ける際は、対角線上の窓を開けると空気の通り道ができて効率的に換気できます。対角線上にない場合でも、窓のそばに扇風機を置くことで効率的な換気ができます。 窓での効率的な換気方法は、ダイキンのサイトが参考になります。
② 24時間換気システムや換気扇を使う
部屋に24時間換気システムや換気扇が備わっていれば、ぜひ活用しましょう。
窓を開ける手間なく換気できますが、換気量が不十分な場合もあります。 換気量を確認し、不十分であれば窓開けと併用してしっかり換気しましょう。
③ 換気機能付きエアコンの設置
ダイキンのうるさらXなどの上位モデルのエアコンには、換気機能が備わっているため、こちらを設置するのも手です。
換気量は不十分ですが、換気頻度を下げる目的では導入するのもアリでしょう。
④ CO2モニターの設置
CO2モニターを設置してCO2濃度を可視化します。
室内のCO2濃度を可視化することにより、換気のタイミングや、普段どのくらいのCO2濃度なのか把握できるようになります。製品によってはアラーム機能が搭載されており、換気忘れを防ぐこともできます。
市販のCO2モニターは通販などで購入できますが、購入の際には経済産業省の二酸化炭素濃度測定器の選定等に関するガイドラインを満たしていることを確認しましょう。
ガイドラインが推奨している仕様は以下の2点です。
- 光学式(NDIR)で検知するもの
- 補正機能がついているもの
市販のモニターは、数千円から数万円までピンキリです。その中でもオススメなのは、安価でガイドラインの仕様を満たすこちらのモニターです。
一定のCO2濃度を超えると画面が点滅して換気不足を知らせくれる機能や、温湿度センサーも搭載しているため、仕事部屋に1つおいておくと仕事が捗るのではないでしょうか?
まとめ
普段意識しづらい室内のCO2濃度ですが、換気を疎かにすると情報活用や集中的活動など、知的労働に必要不可欠な能力に悪影響を及ぼすことがわかりました。
在宅で過ごす時間が増え、空気環境の重要性が増している中、快適な在宅勤務のためにもしっかりと換気にも気を配るべきでしょう。
すでにコロナ対策のためにCO2モニターの設置している方も多いと思いますが、市販のCO2モニターは、精度が低い製品も散見されます。適切にCO2濃度を把握するため、ガイドラインの仕様を満たしているか確認し、場合によっては買い替えを検討することオススメします。
今までCO2濃度を意識していなかった方は、ぜひ上記の対策を取り入れて、生産性の向上を体感してみてください。
Reference